ブリヂストン美術館 超高精細スキャンプロジェクト

公益財団法人石橋財団ブリヂストン美術館(現:アーティゾン美術館)蔵の作品について、超高精細スキャンプロジェクトを実施しました。クロード・モネやピエール=オーギュスト・ルノワールなど、美術館にとって非常に重要な作品群である「ベスト・オブ・ザ・ベスト」のほとんどがスキャン対象となり、大小様々なサイズの約100点がデジタル化されました。作業日数としては準備やテスト、キャリブレーションで二日間、スキャン作業に十日間となりました。
場所は石橋財団アートリサーチセンター、撮影期間は2016年4月15日から29日までです。

2台のスキャナーで作品と額縁を個別にスキャン

ブリヂストン美術館 超高精細スキャンプロジェクト

絵画と額縁ではスキャンに関する特性が異なるため、用途の違うスキャナーを2台用意してデジタル化作業を行いました。
ひとつめのスキャナーは額縁専用となり、3D形状の被写界深度を保つため解像度を200dpiに設定、両方向による照明でスキャンを行います。
もうひとつのスキャナーは1,000dpiを超える解像度で作品のスキャンを行いました。この解像度のスキャンで得られた画像は、今後4Kや8Kといったディスプレイに対応できるコンテンツの制作に役立ちます。こちらは両方向照明、片方向照明によるスキャンのほか、近赤外線によるスキャンも同時に行い、それぞれ三つのパターンでデジタル化する作業となりました。

3パターンのスキャンとフォーカススタッキング

ブリヂストン美術館 超高精細スキャンプロジェクト

両方向照明の場合は上下からあてる光によって絵の陰影は相殺されます。いっぽう片方向照明の場合は表面のテクスチャが強調され、エッジが際立つ印象になります。なお、1,000dpiの高解像度でスキャンを行うと、被写界深度は1mm以下と非常に浅くなります。絵画では絵の具の凹凸やキャンバスのたるみがあるため、最適なピントを得るべくフォーカススタッキングを実施しました。また近赤外線でのスキャンでは、下絵に描かれていたものが判明する成果もありました。
高精細スキャンで色鮮やかな凹凸まで再現した名作の数々は、その美しさがデジタル化により一層際立って感じられます。今後、多くのかたに観ていただく機会があるものと思います。

アーカイブを元にした映像作品を展覧会に提供

「石橋財団コレクションの超高精細スキャニングプロジェクト」の展示の様子

2021年2月からアーティゾン美術館にて開催されている展覧会「STEPS AHEAD 新収蔵作品展示」で、当社制作の4K対応動画が上映されました。
本プロジェクトでスキャンした高精細デジタルアーカイブにより、ジャン・フォートリエの《旋回する線》とゲオルゲ・グロスの《プロムナード》の2作品について細部はおろか深層まで楽しめる映像作品となっています。「石橋財団コレクションの超高精細スキャニングプロジェクト」と題されたセクションにて、実物とあわせてご覧いただけます。
当社のデジタルアーカイブは作品の状態調査や美術研究などに用いられる一方、こうした高精細ならではの新たな展示形態を様々に生み出しています。

※2021/3/31 追記