京都府立総合資料館プロジェクト

2011年の2月から3月にかけて、私たちサビアは京都府立総合資料館が所蔵する貴重な資料のデジタル化に取り組んでいます。本プロジェクトでは、その資料の特性上、多くの難題に直面することとなりました。スキャン対象となるのは、国宝・重要文化財も含む大型絵図・行政資料・古文書、文献資料等、約150点800枚です。
所蔵品で特筆すべきはその膨大な量。「京都府行政文書」だけで約80,000点×300紙=24,000,000紙もの数がありました。さらに記録媒体である紙の種類は多様であり、記録手段も墨から鉛筆さらにはインクなどと変遷があります。加えて、小型国宝100号資料をはじめ、約20年ぶりの閲覧となる250cm~2600cmの巨大資料、平均150cm×600cmの絵図などサイズも様々です。
スキャンにあたっては個々の文書の特性に合わせ、逐次調整をしながら進めていかなくてはなりません。なお、デジタル化の対象となる行政文書の数々は、日常的に府民が閲覧できる資料であることも念頭に置いておく必要がありました。

京都府立総合資料館について

京都府立総合資料館プロジェクト

本館は京都に関する資料を総合的に収集・保存し、府民が閲覧・展示などで調査研究等に利用する目的として、1963(昭和38)年に開館しました。多数の図書資料・古文書・公文書・現実資料を所蔵していますが、なかでも所蔵文化財として「東寺百合文書」(国宝)、「革嶋家文書」(重要文化財)、「東寺観智院伝来文書典籍類」、「京都府行政文書」(重要文化財)といった貴重な資料があります。ただ、2016(平成28)年9月14日に閉館となり、現在は「京都府立京都学・歴彩館」がその事業を引き継いでいます。

スキャン前に入念な事前調査を実施

京都府立総合資料館プロジェクト

スキャン作業に入る前に総合資料館様よりデジタル化対象物のリストを受領し、資料の形状および状態の確認を行ないました。この事前調査をもとに、スキャナの調整やスキャン回数の検討を行ないます。
多くの文書は折り畳まれた状態で紐付きの紙袋などに入れられており、スキャンにあたっては開封し広げる作業工数も想定されました。神社・寺院本末をはじめとする古文書には虫食いや折れなど状態が悪いものもあるため、より慎重な取り扱いが求められます。地籍図など一部には付箋を用いた追記や修正がありましたが、このような場合はデジタル化を複数回行ってすべての情報を読み取る必要があります。膨大な資料はその特性も千差万別であり、作業スケジュールには柔軟性を持たせないといけません。

5台のスキャナで効率的なデジタル化を実現

京都府立総合資料館プロジェクト

実際の作業においては何よりも資料の安全性確保を重視し、非接触かつ低光量でのスキャンを実施。全部で5台の大型スキャナを導入し、資料の寸法や紙質、劣化具合など諸条件に合わせてデジタル化に最適なものを選定しています。常に3台が同時稼働する大がかりな現場でした。資料館様の専門家による管理のもと、資料の運搬や移動、機器の安全な稼働においては地元京都の大学関係者のかたにご協力をいただきながらのプロジェクト遂行となりました。
なお、本プロジェクトのスキャンデータは資料館内用閲覧ソフトのほか「京の記憶ライブラリ」(※現「京の記憶アーカイブ」)にて公開しています。普段は閲覧できない貴重な史料が、デジタル化により画面上で自由自在に見ることができるようになり、各種検索機能で研究や学習にも役立てていただけるようになりました。