今回、デジタル化の舞台となるのは知恩院です。京都の有名寺院であり平安の御代からの歴史を想起させますが、現在の大規模な伽藍が建設されたのは江戸時代。徳川家康から子の秀忠にかけて造営されたものの焼失、しかし孫の家光の時代には再建されているという力の入れようです。襖や障壁には幕府御用絵師の狩野派が腕を振るい、大方丈の廊下にある「三方正面真向の猫(狩野信政筆)」はことに有名。本プロジェクトでは、久隅守景はじめ狩野派絵師の筆になる貴重な文化財をデジタル化することができました。
場所は京都府京都市東山区、浄土宗総本山となる知恩院の「小方丈」。作業期間は2017年5月15日から5月31日までです。
知恩院と本堂の小方丈(こほうじょう)
知恩院は京都府京都市東山区にある浄土宗総本山の寺院です。浄土宗の宗祖・法然が没したゆかりの地に建てられ、江戸時代以降になって現在のような大規模な伽藍が建立されました。
その本堂にある「小方丈(こほうじょう)」は大方丈とともに1641(寛永18)年に建てられ、重要文化財となっています。どちらにも狩野派による襖絵があるものの、大方丈が金箔を用いた豊かな色彩であるのに比べ、小方丈は対照的に水墨画で飾られ、落ち着いた雰囲気に包まれています。
対象物に合わせて各種スキャナを専用設計
スキャンを行う対象物は、小方丈にある6室で合計117点に及び、うち壁画が26点で襖は91点となります。雪中山水の間には壁画があり、正面と側面二面の三面で構成されています。デジタル化にあたり、まず正面は5,749cm×3,300cmと巨大なため、専用に縦型のスキャナを設計したうえで上下に分割してスキャンしました。また側面と軒天との間が60㎝しかないため、従来より小型化したスキャナも設計し、奥まで回り込んでスキャンを行いました。襖のサイズは最大の物で1,630cmx1,928㎝あり、点数も多いため2台のスキャナで同時に撮影しています。