本プロジェクトは、総本山仁和寺の本坊にある襖絵や板戸など約180点のデジタル化を行うものです。スキャン対象となるのは福永晴帆・原在泉・堂本印象といった、いずれも日本画壇を代表する画家の筆によるもの。この貴重な文化財を後世に残し継承すべく、管理手法のひとつとしてデジタル化が提起され、このたび高精細デジタル画像の取得に取り組むこととなりました。
場所は京都市右京区御室にある真言宗御室派の総本山、仁和寺の本坊。作業期間は2011年4月7日から4月11日までとなります。
総本山仁和寺御殿について
仁和寺の本坊は「仁和寺御殿」と称され、白書院、宸殿、黒書院、霊明殿が渡り廊下で結ばれています。そのうち白書院、宸殿、黒書院の三室が今回のスキャン対象となります。
白書院は1887(明治20)年の大火で御殿が焼失した折、仮の宸殿として建てられました。外観は宮廷風の佇まいで、内部には福永晴帆による「四季の松」を題材とした屏風があります。1914(大正3)年になって再建された現在の宸殿は、寝殿造と書院造の様式を融合させた上品な建物で、仁和寺御殿の中心的な建造物。宮廷絵師である原在泉により、襖や戸に山水・花鳥・風俗画が描かれました。また、黒書院は門跡の公式対面所に用いられる建物で、堂本印象が1937(昭和12)年に襖絵を描いています。
新設計のスキャナで多様な被写体に対応
デジタル化の作業期間は3日間と非常にタイトなスケジュールでしたが、朝から夜間まで8名のスタッフで対応しました。作業場所としては白書院・宸殿・黒書院に近接する大内の間を使用。作業期間中も普段通りに一般公開による拝観が行われていたため、襖をスキャンする際には時間に合わせて運び出す必要がありました。
襖絵、板絵、屏風、掛け軸、堂内壁画、立像(金の立像含む)といった多種多様なスキャン対象物に対応すべく、新たに大型と縦型のスキャナを設計。当日は2台を同時に運用してスキャンを実施しています。