林原美術館スキャンプロジェクト

本プロジェクトでは、岡山県にある林原美術館の収蔵品から、重要文化財を含む二点の地図がスキャン対象となりました。
ひとつは江戸時代前期から中期の作とされる「坤輿万国全図屏風(こんよばんこくぜんずびょうぶ)」です。地球球体説を元にイタリア人宣教師により描かれた世界地図が中国から日本に持ち込まれ、六曲一双の屏風に仕立てて彩色されました。大きさは1,648mm×3,760mmです。
またもう一点は重要文化財で、朱印船貿易に用いられた羊皮紙著色の「アジア航海図」です。大きさは507mm×767mm。日本の交易史を研究するうえで貴重な歴史資料となっており、池田家に伝来する本作品は類似のものの中でも制作時期が古いと考えられています。

林原美術館について

林原美術館スキャンプロジェクト

岡山の実業家・故林原一郎氏が蒐集した日本をはじめとする東アジアの絵画や工芸品と、旧岡山藩主池田家から引き継いだ大名調度品を中心に所蔵する美術館です。自身の収集品による美術館の建設は林原氏の念願であったものの、志半ばで逝去。その遺志をついだ遺族や知友によって1964年10月に開館となりました。建物は岡山城二の丸屋敷の対面所跡に位置し、現存する長屋門は美術館の入口として、また土蔵は展示室として活用されています。
代表的な収蔵品としては 国宝の「太刀 銘吉房」や「太刀 銘備前国長船住左近将監長光造」、また重要文化財の「洛中洛外図」(池田本)や「清明上河図」、「アジア航海図」などがあり、その他にも池田家伝来の能や狂言に関するコレクションが充実しています。

屏風の金箔も難なくスキャン

林原美術館スキャンプロジェクト

作業は美術館学芸員の方を含む数名のご協力を仰いで慎重に進められましたが、資料の状態が良いこともあって一日で完了しました。
「坤輿万国全図屏風」には金箔がふんだんに使われており、それがサビアをご指名いただいた理由でした。一般的なデジタルカメラやスキャナーでは、金箔などの光沢部分は反射したり白飛びしてしまい、画像でうまく再現することができません。いっぽうサビアのアートスキャナーは光沢部分を制御してスキャンし、忠実にデジタル化することが出来ます。今回は800dpiと高解像度でのスキャンということもあり、アートスキャナーの実力が遺憾なく発揮され、非常に美しいデジタルアーカイブを作成することが出来ました。林原美術館のウェブサイトでも超高精細画像が公開されていますので、ぜひご覧ください。