ポーラ美術館にて2022年9月17日から2023年1月15日まで開催されている「ポーラ美術館開館20周年記念展 ピカソ 青の時代を超えて」。その展示会場で上映されている2点の解説動画をサビアが制作いたしました。
のちに「青の時代」と呼ばれる不遇の一時期、ピカソは一度描いたカンヴァスを再利用しつつ別の絵を描いていました。近年、科学調査技術の進歩により、現在残されている絵の下層の状態が可視化されるようになってきています。本展覧会は国内外の70点の作品を展示するとともに、こちらの映像を通して最新の研究成果についても紹介しています。
最小限のテキストとビジュアルで見せる解説
ポーラ美術館様からのご依頼は、テキストは名称や注釈など最小限に抑えて、ビジュアルで分かるようにすること、というものでした。まず1本目で取り上げるのは1902年に描かれた「海の母子像」という作品。この油彩画は、完成後に表面に付着した汚れなども含めると5層から成り立っていることが判明しており、光学調査で各層に何が描かれていたかもおおよそ分かってきています。
本映像では、赤外線反射画像を用いて最下層から順番に紹介しつつ、関連する他作品と比較することで各層に残されている描写の痕跡を浮かび上がらせる構成となりました。各シーンの構成が似てしまうため、単調になるのを避けるべくシーンごとにアニメーションのアプローチを変え、メリハリのある動きを心がけています。スポットライトやルーペ風の演出など、直感的に分かるような工夫を様々に施しました。また、展示会場で立って視聴するものであるため、短時間にまとめることにも注意しています。
大胆な動きを交えた映像ならではの解説
一方こちらの映像では、作品の経緯を説明する際に色々な角度から見せていく必要があるため、また違った演出を試みました。
キャンバスの角度を変えたり、裏側を見せたり、表側の絵が滲みだしている状況を紹介するシーンでは、少しコミカルなくらい大胆に作品を回転させています。これは先ほどの科学調査とは異なり、視点を変えることが大きな発見につながることを印象付けるための演出です。まさに映像ならではの見せ方と言えるでしょう。加えて、説明のための描画も少し違和感があるくらいの色合いを選ぶなど、目に飛び込んでくる分かりやすさを最優先に構成しました。
モバイル機器やデジタルサイネージなどの普及で動画を目にする機会がますます増える現状、展覧会で動画が果たす役割も重要になっていくことと思います。